別館アルバトロスと黄金の泉: 占いの館

RWS版タロットの解説&オリジナルのタロットスプレッドを公開しています。
忙しかったりで更新頻度が低く、未だに色々と準備中。ぼちぼちコンテンツを追加していく予定。

2019年5月25日土曜日

【大アルカナ】戦車 - The Chariot


Ⅶ - The Chariot

戦車   キーワード : 難所の打破、積極性、決断、前進、開拓

(そろそろ小説の執筆に戻るので。その前に、この記事を書いておきます)

 前回の記事で書いた「恋人」のカードと比べると、どんな内容の占断であれ、割と登場するなーというイメージがあるのがこの「戦車」ですね。

 やれ「積極性」だの「決断」だのを迫るカードは、タロットの中では多いもんですが。大アルカナでは「皇帝」とか「力」、小アルカナだと「ワンドの騎士」とかね。

 まあ、暴論を言うと……この「戦車」も似たような意味ですね。それで基本的にはこのカード、「オラァッ! 早く行く道を決めやがれ、そして進めええぇぇぇぇぇぃ!!」ってことを意味するものです。

 ……というのはあまりに乱暴すぎるし、また他の決断を迫る系カードとも勿論このカードはニュアンスが違いますので。解説していくとして。

 そういうわけで基本的にこのカードは、とにかく進むこと、そのエネルギーを象徴する存在です。「早く決めろ、そして早く進め、とにかく進め」っていう感じ。皇帝というカードは「これから進むべき道を決める」=「進路を決め、その為の土台を整えよ」という意味なら、戦車は「今すぐここで決めろ、そして今すぐ行動に移せ」っていう切羽詰まった感じですかね。

 即断即決、さらに正しい道を選べと急かすんですから、これ以上に忙しないカードもないもんです。

 なにせ戦車が意味する「進むエネルギー」は、本当にただの「進むためのエネルギー」。それそのものに正悪とかなんてものは無いんで、なので「選択次第で、どちらにも転ぶ」し、そのうえ「誤った選択をすれば、誤った方向にどんどん転がって、その後の軌道修正が困難を極める」なんてことにもなる。まさに諸刃の剣、みたいなものです。

 カードの絵を見ていただけると、諸刃の剣という意味が分かると思います。

 まず戦車に描かれた、翼のシンボル。これは後に(たぶん)小アルカナのスート:ソードに関する記事で本格的に説明していくことになると思いますが、この翼は4大元素でいう「」を意味します。そして風は「障害を切り裂き、前へと進む」ことを暗示していて、まさに正面の敵を吹き飛ばして進んでいく戦車らしいシンボルであるといえるでしょう。
 ただし、この風のシンボルはまさに「諸刃の剣」というヤツで。最適だと思われる判断を下せば、切り裂くのはピンポイントで障害だけになるのだけれども。判断を誤れば、敵も味方もバッサバッサと切り倒していく、または自分のせいで味方を悉く失う……なんてことにもなりかねないんですねぇ。

 戦車で敵陣を吹き飛ばして進み勝利を掴むのか、または戦車で味方を轢き殺して自滅するのか。これもまた、このカードの厄介な点です。

 そして次に、馬の代わりとして戦車の前に佇む、黒と白のスフィンクス。
 スフィンクスは情熱や力、権威などを意味する「火」の象徴(これも多分、後に「小アルカナ、スート:ワンド」で詳しく解説することになると思う)です。戦車の次のカードである「力」に描かれるライオンも、似たような意味を持つシンボルですが……まあ、それは措いといて。あとスフィンクスに関する逸話も、今は脇におきまして。

 この「黒」と「白」のスフィンクス。こいつらを理解するために、簡単な言葉を使うならそれはまさに「天使と悪魔」でしょう。
 片一方、黒いほうのスフィンクスは、甘い誘惑を囁きます。「こっちの道を選んだほうが、君はラクが出来るよ」とか「こっちを選んだほうが、うんと楽しいって!」とか。そして片一方、白いほうのスフィンクスは、厳しい言葉で助言することでしょう。「楽をしようと思ってはいけません、それは巡り巡ってあなたを不幸に陥れます」とか「快楽を優先してはなりません、それは身を滅ぼすだけです」とか。

 黒いスフィンクスのほうに舵を切れば、間違いなく悪い方へと転落していきます。
 そして白いほうのスフィンクスに舵を切れば、少なくとも悪い方へはいきません。

 白いスフィンクスを選んだ時。それは厳しい道のりだったり、困難を極める選択かもしれませんが、その決断は最終的に物事を良き方向へ導くし、難所さえ超えればあとは右肩上がりでぐんぐんと進んでいくでしょう。

 というわけでこのカードは「その場での決断」というワードがキモとなります。まあとにかく、最善と思われる判断を下す努力をしなさいっていうカードですね。

 正位置の場合は「正しい選択により状況が良い方向へと進展し、望んだ成功へと近付くこと」を意味し、逆位置の場合は「誤った決断により、多くのものを急速に失う可能性があること」を示します。

 そして、同じスプレッドに「ワンドの騎士」が出た場合。とにかく早く行動しなさい、今すぐに!という意味合いが強くなります。「ワンドの騎士」が正位置の場合は「善は急げ」で、「ワンドの騎士」が逆位置の場合は「軌道修正を急いで行いなさい」といった感じになるでしょう。

 というかこのカード、大抵の場合は「ワンドの騎士」とセットで登場します。




【正位置】 正しい選択により、状況が打破される。
  衝突や議論の場。正しい決断。前向きな態度。解決される難題。
  • 現状は混乱を極めているかもしれませんが、状況に惑わされず、あなたが正しいと信じることを実行し続けてください。そうすれば必ず、道は拓けます。
  • なんとなく気付いているはず。風向きはあなたに味方している、と。けれどもそこで油断したり、驕ってはいけません。謙虚に、堅実に努力を積み重ねれば、あなたが望んだとおりのものを得られるでしょう。
  • もしあなたが今、誰かと衝突している場合。たぶん正しいのはあなたの意見であり、周囲はあなたに味方をするでしょう。ただし気を付けてください、あなたが「絶対的に」正しいとは限りませんので。
  • あなたが積み重ねてきた努力が、そろそろ実を結ぶ気配があります。とはいえそれはまだ確実ではありません。なので努力を怠ってはいけませんよ。
  • 今までは心は決まっているのに、動き出せなかった。それはもう終わり。今こそ、動き出すその時です。この時運を逃してはいけません!

【逆位置】 誤った選択により、転落していく。
  衝突や議論の場。誤った決断。後ろ向きな態度。より険しくなっていく状況
  • 今すぐ立ち止まって、自分の行動を考え直して! あなたは破滅へと向かおうとしている、今すぐ改めないと、後に酷い事態に陥りますよ!
  • 今のあなたには、なんだか軽率な行動が目立っているようです。その場での思い付きにより起こした行動や発言が、あなたの敵を着々と増やしているようです。
  • 残念ですが、あなたの意見は間違っていますし、その間違った意見に固執しているようです。間違いを受け入れて、間違いを切り捨てましょう。でなければあなたが、周囲の人々から切り捨てられます。
  • 悲しいことですが、あなたが今まで重ねてきた努力はあまり意味がなかったようです。努力の方向を間違えてしまっていました。方向性を再検討するか、いっそその目標を潔く諦めたほうがいいかも。
  • なかなか決断を下せずに、ずるずると引き摺って、悩んでいます。いつまでうじうじと悩んでいるつもりですか。早く頭を切り替えて、次へ進みなさい!

2019年5月16日木曜日

【大アルカナ】恋人 - The Lovers


Ⅵ - The Lovers

恋人 または 恋人たち  キーワード : 好転の予兆、恋人たち、結婚、友情、信頼

(お久しぶりすぎる更新でごめんなさい! 小説の執筆がひと段落ついて、現在はゆったりまったり期間なので、久しぶりにこのブログの記事を書く時間が設けられました)

 22枚ある大アルカナには、大きく分けて5つの区切りがある――と個人的には考えています(ここの解釈は人それぞれなので)。以下が、その区分。

  • 偉い人シリーズ(「Ⅰ魔術師」~「Ⅴ法王」までのカード)。
    常人を超えているけれどもまだ人間の範疇にある人ら、って感じのカードたち。それぞれに、また違った威厳がある。
  • 街の人たちシリーズ(「Ⅵ恋人」~「Ⅸ隠者」までのカード)。
    ↑の「偉い人シリーズ」の、その下に居そうな人々、って感じのカードたち。威厳はあまり無くとも、内に秘められた力強さや神秘性が滲み出ている。
  • 心象シリーズ(「Ⅹ運命の輪」~「ⅩⅥ塔」までのカード)。
    人間の内にある心理と葛藤、概念の寓意画って感じのカードたち。希望、道徳、自己犠牲、喪失、自制、怠惰、絶望などなど。
  • 超自然シリーズ(「ⅩⅦ星」~「ⅩⅩⅠ世界」までのカード)。
    世界そのもの、人間にはとても理解の及ばない領域、って感じのカードたち。偉大すぎるというか、そういう感じだよね。
  • 愚者(「愚者」のカードのみ)。
    どこにも属せないオンリーワン。

 そんなこんなーで「偉い人シリーズ」の解説は終わったので、今回からは次の「街の人たちシリーズ」に入り、その一枚目である「Ⅵ恋人」を書いていきますぜ!

* * *

 恋人というカードは、個人的には占断であまり見かけないカードという位置づけにあります。色恋ごとを占う場合はもしかすると登場率が高いのかもしれないけれども、当方はそういうのを一切お断りしているのでね……。

 しかし、こと友情が問題となると、正位置であれ逆位置であれ、よく登場するなぁという印象がありますね。

 そういうわけで基本的にこのカードは、人と人との絆を象徴する存在です。男女かどうか、恋愛関係にあるかどうかは問いません。恋人同士の絆は勿論、友情に関することや、親子関係など、あらゆる絆を代表します。

 カードを見ていただくと、下には裸の男女が立っているのが分かります。右側に立つ男性は、左側に立つ女性に首ったけの様子で、じーっと見つめているものの。女性はというと、中央上部に佇む神様のほうが気になって仕方がないご様子。
 つまりこの時点で彼らはまだ「恋人」ではないのですね。まだ“神による采配”で出会ったばかりで、これから先にそういった関係になるのか、ならないのか……――というところでしょう。

 それから裸は「嘘偽りない」とか「無垢さ」の象徴であり、転じて「正直になりなさい」という意味。それは「自分の気持ちに正直になり、相手にその思いを伝えなさい」ということでもあり、そして「常に正直に、誰に対しても誠実でありなさい」ということでもあります。

 尚、このカードには「アダムとイヴがどうたらこうたら~」という話があったりもしますが、ここでは面倒臭いのでそれは省きます。まあ一つ言うなら、女性の背後にある「知恵の実」=「嘘をつくずる賢さ」に手を出したら最後、関係は破綻していくでしょう、ってことですかね。

 というわけでこのカードは「出会い」というワードがキモとなります。何はともあれ「その出会いを大切にしなさい」というカードです。

 正位置の場合は人間関係が円滑に進み、何事も順調に進むことを意味し、逆位置の場合は人間関係に亀裂が生じてトラブルが起こる予兆があることを示します。

 もっと簡単なことをいえば、正位置の場合は「そのご縁を大事にしなさい」ということを、逆位置の場合は「そのご縁は切った方がいい」ということに。
 ただし「切った方がいい」のか、または「(質問者自身が)そのご縁を修復するために、努力をしたほうがいい」のかは、場に登場した他のカードを参照しながら、慎重に判断を。「塔」やら、逆位置の「世界」とかに加えて、その他にも不穏さを告げるカードが並ばない限り、そうそう滅多に「切った方がいい」という占断は出ませんので……。




【正位置】 誠実な態度で接すれば、物事が順調に進んでいく。
  恋人同士や友人たち、同僚たち。誠実な対応。順調に進む恋愛。
  • 現状は特にこれといった問題もなく、それでいて幸せな時間でしょう。お互いに何もやましい隠し事を抱かぬ限り、このまま関係は順調に進みます。
  • 友人関係や職場において、あなたはうまく立ち回っていますし、良い関係を築けているでしょう。彼らから信頼されています。
  • もしあなたに恋人が居て、相手との将来を考えているのなら。その次の一歩を踏み出すときが近い、または今がその時だといえるでしょう。
  • 仕事場や家庭など、身近にいる人々を大事にしましょう。そうすればあなたのもとに、人々がツキを運んできます。
  • 近いうちに、周囲の人々から何か意見を求められる機会があるかもしれません。その時には、なるべく前向きで、希望を抱ける判断を下しましょう。

【逆位置】 不誠実な態度により信頼を失う。
  信頼に値しない人物。やましい隠し事。裏切り。離別。関係の破綻。
  • 現在、自分ひとりの快楽を何よりも優先しているのでは? それにより周囲を蔑ろにしていると、あとでしっぺ返しが来ますよ。
  • 相手を裏切り、その背徳感をあなたは楽しんでいる。その道の先に待っているのはもれなく、破滅です。そうなる前に関係の修復を。
  • 様々な理由で、疎遠になりつつある相手がいるようですね。そのままお別れをするのもいいですが、その前に一度、自分自身の態度を反省し、謝罪してみては?
  • 相手に対し不満が募っているようです。原因はお互い様かもしれません。でもその相手とすっぱりお別れしたほうが、あなたにとって良いのかもしれません。
  • 何事にも曖昧な返事をし、ずるずると引き摺り、決めかねていると、事態は悪い方に転がっていきます。早めの決断を。